夢窓 万華がイマジネーションの世界からドキュメンタリーの世界へ飛び出した衝撃を 書き上げました。 デビューから2年が経過し、作品としては4作目となる小説は、 あらゆる角度から人間の本質を描き出し、 この世の最も美しい言葉で書き綴る純文学の真髄としたい。 そして、この世に生きる、如何なる世界の住人の心も感動させる。作家は神ではないのだが、この作品に、 何もかもが宿ってくれることを願って書き上げます。 『私は、自分の中からひとりで出てこようとしたところのものを生きてみようと欲したに過ぎない。 なぜそれがそんなに困難だったのか』ヘルマン・ヘッセ「デミアン」より 『理想の、あるいは存在しない人間の物語でなく、現実の、ただ一度きりの、生きている人間の物語である。 私は探し求める者であるが、もはや星の上や書物の中を探し求めはしない。 私は書き始める。考え出された物語のように、甘くも、和やかでもない。 それは、不合理と狂気、苦しみと夢の味がする。どんな人も完全に彼自身ではなかった』 ヘルマン・ヘッセ「デミアン」より 第一話『4時間(Masquerade)』 2003年12月 執筆完了 彼に会ったのは、運命がちょっとした悪戯を仕掛けたかのような偶然であった。 でも私は、4時間彼と語り合った。 『孤独で黙りがちな者のする観察や、出会う事件は、社交的な者のそれらよりも、 もうろうとしていると同時に痛切であり、 彼の思想は一層重苦しく、一層奇妙で、その上必ず一抹の哀愁をおびているものだ。 一つの眼差し、一つの笑い、一つの意見交換で片づけてしまえる様な形象や知覚が、 不相応に彼の心を捕らえ、沈黙のうちに沈み、 意味深いものと成り、体験と成り、感情と成ってしまう』 トオマス・マン 1913年「ベニスに死す」 何気なく私の会った青年は、凄まじい人生を生きていて、とてつもなく大きな夢を持っていた。 自分の小説である「さよならを言わないで」が現実のものと成って、私の前に現れた。 私がこれまで、ずっと目を背けていた世界が、 私の体の中を付き抜けて行く様をあなたはどう読まれるでしょうか? 第二話『歩』 2006年 2月 執筆完了 最初に、彼女の心に触れたのは、ネットの書き込みであった。 世間という壁を私の前から消し去った人は、 わずかに21年の人生しか送っていない女性であった。 当たり前という生き方に、運命という言葉が重なったなら、彼女の人生を描けるのかもしれない。 普通の女の子であった彼女が、大人たちや社会というものに翻弄されながら自分らしく生きて行くには、 この街は余りにも病んでいるのかもしれない。 いや、この街で生きて行くには、 彼女の心は余りにも多くを背負い過ぎているのかもしれない。 そんな彼女に、あなたの心が触れた時、きっと一筋の光が頬を流れることでしょう。 第三話『19歳(They are)』 2006年12月 執筆完了 この世の中には断片がある。そこだけ切り取られてしまうような断片がある。 目に見えて進化を遂げるこの社会にあって、その役割を担う大多数の市民が普通と呼ばれるとしたら、 一体、彼らを何と呼べばいいのだろうか? にも関わらず、この世の中の流れを作り出しているのは、実際は彼らなのかもしれない。 正夢の特別編として、現代の何処にでも居る19歳の青年の生き方を書き上げることにしました。 人は彼らの生き方を関係ないものとして、関わってはいけないものとして、捕らえていることに間違いはなく、 それが間違っているとも正しいとも判断は出来ないのですが、これを読んだあなた自身がこの社会を感じてくれたなら、 そう願って書き上げます。
この世には2つの心があることを知っていますか? 常人と呼ばれる人達とそうでない人達が確かに存在して、絶対多数の常人の中で、人とは違うと いう思いを押し付けれらながら彼らは実際に生きている。 それが如何なる苦しみであるのか、社会に投げ掛ける問題小説です。一人でもいいからこんな子供を もうこの世に産み落とさないで、切実な願いを込めて書き上げました。 「1章 気付く」 彼の異常なまでの本質に気づくまで、苦しみぬく半年もの月日を費やさなければならなかった。 「2章 触れる」 それから更に半年の後、彼の中に生き続ける成長しない苦しみに触れた私の心は、 その深刻な痛みに世の中のテーマを訴ることを決断した。 それは決して、生易しいテーマではなく、 私一人で訴え切れるものではないのであった。 「3章 源氏」 二度とこんなことが繰り返されないために、真実をお見せしましょう。 「4章 一人でもいいから」 私たちと同じ人間でありながら、全く違った心を持った人達がいた。 多くの人たちが、心底に抱えながらも、その真髄に気づかずに生きている、現代に蔓延する問題。 自らがそれに犯されていることに気づきながら、その寂しさにひたすら目を背け、 代償として異常な人間関係にすがって生きている青年。ピカソと自分を重ね合わせているその真意に、 彼は目を背け続けて生きている。
あらゆる空しさ、あらゆる切なさ、あらゆる哀しみ、あらゆる無邪気さ、 「青春」とはそんな全ての答えを知っている。 お金、美貌、社会的後盾、生まれながらにして、 それら全てを与えられてきたニューヨークの娘は、両親を取り戻す為に、 一人イタリアへと旅に出た。そこで出会った少年には、 常に影が付きまとっていたが、一夏の思い出だと決め込んでいる彼女にとって、 それは大した問題ではなかった。 だが、一夏の思い出では済まされないという自らの気持ちに気づいた時、 事件は起こった。さて、二人の青春は何処へさ迷って行くのか。